Laboratory of Landscape

村上修一研究室

前へ
次へ
english

内湖干拓地の軸線景観


撮影:西村成貴

フランスのヴェルサイユ宮殿庭園やヴォー・ル・ヴィコント庭園のような壮大な軸線景観を,内湖干拓地の外周の堤防上で楽しむことができる。

西村成貴さんは,内湖の外周に堤防が築かれ,干陸化された湖底に道路,水路,圃場が格子状に配置されることによってできた,大きなフライパンのような内湖干拓地の地形に着目し,軸線を中心とする景観が外周の堤防上より眺望されるのではないかと予想し,近江八幡市と東近江市に立地する大中湖(だいなかのこ)干拓地を対象に検証を行った。

干拓地内の道路および排水路と外周の堤防との交点79ヶ所に視点を設定し,干拓地の道路,水路,圃場などの平面構成と周囲の地理的状況,干拓地や周囲の地形に関わる立体構成,堤防上から眺望される景観の構成について,文献資料や地図の調査および現地踏査の結果を分析し,軸線を中心とする景観の特徴を考察した。


眺望景観写真のトレース分析例(作図:西村成貴)
軸線が道路(左),軸線が排水路(右)

その結果,道路や排水路の軸線を中心に,その両側に圃場が並ぶという景観の特徴が明らかとなった。そのような軸線と線対称の景観の特徴は,建物やその他の要素によって弱められることもわかった。さらに,フランス式庭園の既往研究で指摘された錯視効果を生み出す勾配変化が,この干拓地にも見られた。

本研究を契機として,干拓地の農業基盤が有する軸線景観の美しさが,社会に広く認知されるようになることが期待される。

参考:
琵琶湖干拓史編さん委員会編(1970):琵琶湖干拓史

平岡直樹(2018)ヴェルサイユ宮殿庭園の立体構成と平面構成及び構成物による視覚効果の創出技術:ランドスケープ研究(オンライン論文集) 81(5):443-448

平岡直樹(2016)ヴォー・ル・ヴィコント庭園の立体構成と平面構成及び構成物による視覚効果の創出技術:ランドスケープ研究79(5):397-402
more information
西村成貴,村上修一,轟慎一(2019)軸線の見通しから評価した大中の湖干拓地における景観構成の特徴:ランドスケープ研究82(5):593-598

西村成貴,村上修一,轟慎一(2021)津田内湖干拓地における軸線を中心とする見通し景観を変容させた要因:ランドスケープ研究(オンライン論文集)14:24-33

西村成貴,村上修一,轟慎一(2022)琵琶湖沿岸域の内湖干拓地における軸線を中心とする見通し景観の評価構造:ランドスケープ研究85(5):505-510
ページのトップへ戻る