Laboratory of Landscape

Shuichi Murakami 村上修一研究室

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プロムナード・ガーデン
Awaji Promenade Garden

淡路島博覧会会場の法面小段利用(コンペ応募案)

万葉集に二十首以上を数える、淡路島や明石海峡にまつわる歌の多くは、海・風・雲・動植物・漁民といった場固有の事象が、古代人の感覚によって鮮やかによみとられたものである。
我々はこれらの事象を感じることができるだろうか?
渡らんとする海峡の波に恐れの念を抱くことを忘れさせた技術、環境に充満する地球規模の情報、といったことが、「いま、ここ」の事象から我々の感覚を遠ざけているのではないか?
古代人の歌心や遊び心を刺激した事象は、「いま、ここ」にも存在すると信じたい。このサイトは空に向かって開け放たれ、海を眺望できる南東向きの斜面にあって、日の出から陽光にあふれ 、春から秋にかけて南よりの風が吹き寄せる。
このような条件から、空・海・光・風という四つの事象が顕在化し、訪れる人々の遊び心を刺激し得る空間としてプロムナード・ガーデンを提案する。

サイトには「いま、ここ」の文脈とともに、通時的な文脈がある。特定の時間的文脈によって、「いま、ここ」の事象の媒体である空間の形態を生じさせる。
万葉集にうたわれた近隣とこの場所を結ぶ方向軸: 古代人の歌心によって結ばれた線にしたがって、各空間の境界や動線の方向などを決める。大阪湾・瀬戸内沿岸のみで、これだけの多方向軸が設定され、空間形態の無数の可能性が示唆される。

空間構成:

300m余も高低差なく一方向の眺望が続くという敷地特性をふまえ、一定の距離ごとに多様な空間が重なり合い、歩くにつれて空間の変化が楽しめることを意図する。
四事象のテーマに対応する開放空間の間に、対照的な閉鎖空間として常緑樹林をはさみ、空間の変化を強調する。
周辺の山林植生であるウバメガシ・ヤマモモ主体の樹林に包まれて歩いていると、視界がひらけて開放的な空間に出る。そして再び樹林の中へはいっていく、を繰り返す。
各空間は一つのテーマにしたがって構成されるが、各空間での体験が一元化することはない。
サイトには無数の事象が偶発的に連続する。様々な感性によって多様な事象の読み取りがなされるであろう。

空:
足元からせりあがる地面によって下界から切り離された空。下に貼られた鏡面に切り取られる逆さまの空。雲・天体・鳥・飛行機などの動きが目に飛び込む。鏡面の間、階段を登ると見えてくる海原。後方の草地で光と風を受けながらの休憩。


海:
壁にあけられた縦に長い穴の中で、空と地面にはさまれる海。横に長い穴の中で、水面だけの海。時々フェリーや漁船が横切る。巻き込むように点在する、色とりどりの丸石やビー玉、貝殻などの混じった砂場で汀遊び。草地でパラソルを開いて風を受けながらの日光浴。


光:
天井から落ちてくる様々な形の光。列柱や樹木を透過して様々なパターンやテクスチャーを地面や壁に投影する光。常緑樹や白砂、瓦など多様な素材の様相を織りなす光。天井の穴に切り取られた空には雲が流れ、空洞を風が吹き抜ける。


風:
笹の葉をカサカサと鳴らす風。日が暮れると、笹に混じって立つファイバーグラスの灯りがゆらゆらと揺れ、蛍か夜光虫か。笹山の間をぬけるとひらける海原の展望。


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